町内会って、いったい何だろう?

僕が今住んでいるアパートの家賃明細を見ると、毎月決まった額が「町内会費」として引き落とされている。まるで、一度も聴いたことのないサブスクリプション・サービスにお金を払い続けているような気分になることがある。正直に言えば、僕は自分がどこの町内会に属しているのかさえ、正確には把握していない。日々の生活の中で町内会を意識することなんて、道端の石ころを意識しないのと同じくらい稀なことだ。
それでも、僕がこのシステムに文句を言わずにいるのは、たった一つの理由があるからだ。それは、ゴミ捨て場だ。
朝、眠い目をこすりながら出したゴミ袋が、夕方には魔法のように消えている。もちろん回収してくれるのは市の清掃員の方々だけれど、その「場所」を管理し、カラス除けのネットをかけ、掃除をしているのが誰かと考えたとき、そこには町内会という目に見えない組織の影がちらつく。ある掲示板の意見を覗いてみると、「町内会に入っていないならゴミ捨て場を使うな」なんていう極端なトラブルも世の中にはあるらしい。
賃貸に住む僕らにとって、町内会との接点はその程度かもしれない。でも、もし君が将来、自分の家を持つことになったら、話は少し変わってくる。そこには、もう少し複雑で、人間臭いドラマが待っているようだ。
街灯の明かりは誰が灯しているのか
夜道を歩いているとき、ふと街灯を見上げることがあるだろうか。あの明かりが点いているおかげで、僕らは安心して家に帰ることができる。実は、あの防犯灯の多くは、町内会が市に申請して設置し、電気代の一部を負担したり、球切れの連絡をしたりしているんだ。
秋田市のガイドブックを読んでみると、町内会の仕事は驚くほど多岐にわたる。防犯パトロールに、花壇の手入れ、お祭りの運営、そして災害に備えた訓練。まるで、街全体を一つの大きなシェアハウスに見立てて、住人みんなで管理しているようなものだ。
でも、君も薄々感じているかもしれないけれど、このシステムは今、ちょっとしたピンチを迎えている。
ある調査によると、町内会長さんの多くが「役員のなり手がいない」と嘆いているそうだ。その割合はなんと6割を超えている。高齢化が進み、いつも同じ人が役員をやっている、なんていうのはよくある話だ。掲示板には「役員の負担が重すぎる」「休日に掃除や行事に駆り出されるのは勘弁してほしい」という悲痛な叫びも書き込まれている。
確かに、せっかくの休日に早起きして草むしりをするのは、魅力的な提案とは言えないかもしれない。それに、集められた会費が一部の年配の方々の飲み代に消えているんじゃないか、なんていう疑念を持つ人さえいる。もちろん、実際には会計監査という厳しいチェックがあって、1円単位で管理されているところがほとんどなんだけれどね。
緩やかなつながりと、これからのこと
それでも、僕はこの少し古臭いシステムを、単なる「面倒なもの」として切り捨てる気にはなれないんだ。なぜなら、いざという時、例えば大きな地震が起きたり、豪雨災害に見舞われたりしたとき、頼りになるのは遠くの親戚よりも近くの他人だったりするからだ。
ガイドブックには、町内会が「一番身近な頼りどころ」だと書かれている。普段は煩わしいかもしれない近所付き合いが、非常時には命綱になる。それは、保険のようなものかもしれない。掛け金は「手間」と「時間」だ。
でも、今の学生である君たちに「将来のために今すぐ町内会活動に参加しよう」なんて言うつもりはない。勉強にバイトに遊びに、君たちは忙しい。それに、強制されてやるボランティアほど、味気ないものはないからね。
ただ、これからの町内会は、今までとは少し違う形になっていくかもしれない。連絡網が回覧板からLINEに変わったり、ホームページで情報を発信したりと、デジタル化を進めているところも増えているんだ。役員の負担を減らすために、業務をスリム化したり、外部のサービスを使ったりする知恵も必要だろう。
もしかしたら、君たちが大人になる頃には、町内会はもっと「ゆるい」コミュニティになっているかもしれない。義務感で縛るのではなくて、例えば「週末に公園でコーヒーを飲む会」くらいの、気軽な集まりが入り口になるような。
終わりに
町内会が存続の危機にあるというのは、事実らしい。加入率も年々下がっている。でも、それは「必要ないから消える」のではなくて、「形を変える時期に来ている」ということなんじゃないかと僕は思う。
君がいつか、どこかの街で暮らすことになったとき、ふとゴミ捨て場が綺麗なことに気づいたら、あるいは夜道で街灯の明かりにホッとしたら、少しだけ想像してみてほしい。その背景には、誰かの地道な活動があるということを。
そしてもし、君に少しだけ余裕ができたら、その輪の中に顔を出してみるのも悪くないかもしれない。そこには、ネットの中だけでは見つからない、意外と温かい「居場所」があるかもしれないから。

