消えゆく花火と、僕らの未来の灯りについて

夏が来ると、僕はどうしても夜空を見上げてしまう。まるで、失くした古いレコードの針を探すみたいにね。 君もきっと、花火大会の思い出がひとつやふたつはあるだろう? かき氷の冷たさと、ドーンというお腹に響く音。それは永遠に続く夏の約束事のように思えるけれど、実はとても脆いバランスの上に成り立っているんだ。
今日は、秋田市の「雄物川花火大会」の話をしようと思う。少しだけ真面目な、でも君の未来にも関わる大切な話だ。
魔法の裏側には、汗をかく人がいる
雄物川花火大会は、30年以上も続いてきた秋田市の夏の風物詩だ。でも今、この大会が「来年はもうできないかもしれない」という危機に瀕している。 なぜだと思う? お金がないから? それもある。でも、もっと深刻なのは「人」がいなくなってしまったことなんだ。
これまで、この花火大会の準備から後片付けまで、4月から9月までの長い期間の業務を、なんとボランティアのたった一人が背負っていたらしい。想像してみてほしい。文化祭の準備を、クラス全員じゃなくて君ひとりで半年間やり続けるようなものだ。それはもう、魔法というよりは苦行に近い。 その中心人物が高齢などの理由で退任してしまい、代わりになる人が見つかっていない。それが現実だ。
運営にかかるお金は約2000万円。その8割は秋田市からの補助金、つまり税金で賄われている。「じゃあ、有料席を作って稼げばいいじゃないか」と君は思うかもしれない。僕もそう思った。実際、広告代理店に任せてビジネスとしてやり直そうという案も出たんだ。でも、そうすると「市からの補助金が出なくなるかもしれない」というジレンマに陥ってしまった。
お金を稼ごうとすると、今ある支援を失う。なんだか、親に「バイトするならお小遣いなしね」と言われている学生みたいだね。結局、その改革案は立ち消えになってしまった。
花火でごはんを食べる、という選択
一方で、少し視点を変えてみよう。秋田には「大曲の花火」という、とてつもない巨人がある。 大曲がある大仙市では、花火をただのイベントではなく「産業」として捉え直したんだ。「株式会社花火創造企業」という会社を作って、ボランティアではなく、ちゃんと給料が出る「職業」として花火に関わる人を雇い、育てている。
そこでは、若者たちが花火作りを仕事にし、冬の間も次の夏のために準備をしている。彼らは花火でごはんを食べているんだ。もちろん、大曲は全国から人が集まる特別な場所だから、単純に真似はできないかもしれない。でも、「好きなことを続けるために、それをビジネスにする」という考え方は、君の将来のヒントになるんじゃないかな。
ただ、大曲のような成功例ばかりじゃない。全国的に見ても、警備員不足や資金難で中止になる花火大会が増えている。夢だけでは、現実は動かないということさ。
続けることの難しさと、変わることの勇気
ここで少し、別の角度からも光を当ててみよう。 実は世の中には「花火が苦手だ」という人もいるんだ。大きな音が怖かったり、人混みが嫌いだったり。ペットの犬や猫がパニックになってしまうから、花火大会の日は憂鬱だという声もある。だから、花火大会がなくなることを「静かになっていい」と感じる人もいる。それは冷たいことじゃなくて、一つの正当な意見だ。
そんな多様な声の中で、雄物川花火大会はどうすべきだろうか。 今まで通り、地域の人たちの善意だけで頑張るのか。それとも、批判を恐れずに有料化して、プロに任せる形に変わるのか。あるいは、潔く幕を下ろすのか。地元の人たちの間でも、意見は揺れている。「今年は見送ろう」という声さえあるそうだ。
変わることは怖い。今まで通りでいられたら、それが一番楽だからね。でも、時代は川の水のように絶えず流れていて、同じ場所に留まることは許してくれない。 ボランティアに頼りきりだった仕組みが限界を迎えた今、必要なのは「新しい仕組み」を作ることかもしれない。
未来のチケットは君の手の中に
雄物川花火大会のピンチは、決して他人事じゃない。日本のあちこちで起きている「人手不足」や「資金不足」の縮図だ。でも、だからこそチャンスでもあると僕は思うんだ。
君が大人になる頃、社会はもっと大きく変わっているだろう。その時、君ならどうする? 「誰かがやってくれる」と待つのか、それとも「僕が新しい方法を考えよう」と手を挙げるのか。 あるいは、花火師になるのもいいし、それを支えるビジネスマンになるのもいい。もしかしたら、音の出ない静かな花火を発明するエンジニアになるかもしれないね。
花火は一瞬で消えてしまうけれど、それを打ち上げようとする人たちの情熱や、そこにある課題はずっと残る。今年の夏、もしどこかで花火を見上げることがあったら、その美しさの裏側にある「仕組み」や「人の思い」に、少しだけ思いを馳せてみてほしい。 そこにはきっと、君の未来を照らすヒントが隠されているはずだから。
結局のところ、雄物川の花火がどうなるかはまだ誰にもわからない。でも、一つだけ確かなのは、何もせずにいれば、美しい光は記憶の中に消えてしまうということだ。 君の未来が、鮮やかな大輪の花を咲かせることを願っている。

