制服と私服、そして自由な未来

制服のぬくもりを覚えていますか

 僕が高校生だった頃、おしゃれなんてものとは縁遠い生活を送っていたんだ。
 毎日着るのは制服か、あとは体操着くらい。記憶がおぼろげだけど、冬服、夏服の厳密な区別もなく、同じ制服を通年で着ていたような気がする。どのくらいの頻度で洗濯していたかなんて、今となっては遠い昔の話だよ。もし、あの頃に「制服か私服か、選んでいいよ」と言われたとしても、きっと面倒くさがりの僕は、毎日同じ制服を着ていたんじゃないかな。
 でも、時代は少しずつ変わっているようだ。最近、高校の制服について、真剣に話し合われているのを知っているかい。それは単に「スカートを短くしたい」とか「ブレザーのデザインを変えたい」という話だけじゃない。君たちの未来、そして秋田の将来を考える上で、服が持つ意味について立ち止まって考えてみる良い機会なんだ。
 入学時に保護者の方々の負担を軽くするために、制服の着用を義務付けない学校もあると聞く。この「標準服と私服の選択制」は、単なるファッションの話ではなく、君たちの快適さや、家計の負担にまで関わる、かなり真面目なテーマなんだ。

朝の決断疲れをなくしてくれる、制服という名の救世主

 朝、目覚めてから学校に行くまでの時間は、なぜあんなにも短いんだろうね。そんな慌ただしい時間に、「今日、何着よう?」と悩まなくて済むのが制服の最大のメリットかもしれない。多くの高校生が、制服のいいところとして、「毎朝服装に迷わなくて済む」ことを挙げている。僕のように私服のコーディネートに自信がない人間にとっては、まさに制服は「朝の救世主」だったわけだ。
 さらに、制服は集団に属している証にもなる。秋田の高校は、それぞれが特徴的な制服を持っているから、電車の中で秋田中央のチェック柄のスカートを見かけたり、秋田工業の珍しいセーラー服を見かけたり、個性豊かな秋田西の夏服なんかを見ると、なんだか「ああ、地元の高校生だなぁ」という気持ちになる。制服は、外に出たときに「〇〇高校の生徒だ」という自覚と責任感を持たせてくれる看板のような役割も果たしているんだ。

 だけど、制服には「弱点」もある。それは主に、快適さに関わる部分だ。「暑い日も寒い日も、体温調節がしづらい」という声は少なくない。最近の日本の夏は、ワイシャツの素材だけでは対応しきれない猛暑だ。また、いつも同じ服を着なければならないことに「窮屈さ」を感じる生徒もいるというデータもある。制服を着ることに精神的な窮屈さを感じる生徒は、全体の3割を超えているんだ。

「自由な選択」の裏に潜む経済的な落とし穴

 次に、お財布(経済性)の話をしよう。これが、なかなか複雑なんだ。
 高校入学の時、制服一式を揃えるのにかかる費用は、平均で10万円を超えている。保護者の方の8割以上が、この価格を「高い」と感じている。大変な出費だよね。

 そこで、「標準服と私服の選択制」が提案されるわけだけど、一見すると経済的な負担が減りそうに思える。たとえば、制服ではなくユニクロのような安価な標準服を導入した学校の事例では、制服代を大幅に抑えることができたんだ。
 ただ、ここに注意すべき落とし穴がある。もし君が「標準服」を購入し、さらに「私服」も毎日着るためにたくさん買い揃えたとしたら、それは一番お金がかかる選択になってしまう。制服を3年間着続けた場合の月々の費用は、私服に毎月数千円かけるよりも安く済む可能性が高い。保護者アンケートでも、服装が自由化されたときの最大の懸念は「私服の購入などによる経済的な負担の増加」だった。

 結局のところ、経済的な面だけを追求するなら、「標準服を3年間、徹底的に着倒す」のが最も合理的なのかもしれない。しかし、自由な選択には、常に「自分で費用をコントロールする責任」が伴うということを覚えておいてほしい。

秋田の未来は、多様な服装から生まれるかもしれない

 僕らが高校生だった頃に比べ、今は「多様性」がすごく大事にされる時代だ。性別を気にせずスラックスを選びたいという生徒が増えているし、寒暖差が激しい秋田では、暑さや寒さに合わせて私服を選びたいというニーズも高まっている。

 実際に、秋田県内でも、男女共通デザインの上着を採用し、スラックスとスカート、ネクタイとリボンを自由に選べるようにし、さらに寒い日のためにパーカー(フード付きの上着)まで用意している高校の例もある。制服が、ジェンダーや信仰上の理由、あるいは単に「体が男性の骨格で、女性用の制服を着ると窮屈だ」 といった個人的な問題に柔軟に対応できる手段の一つとして、私服の選択肢があるのは合理的だと言えるだろう。

 制服か私服か。どちらを選ぶにせよ、それは君自身が「その日の自分」に最もふさわしい服装を選ぶ練習だ。これからの予測困難な社会(VUCA社会)で生き抜く君たちには、「誰かに言われたことをやる」のではなく、「自分で考えて、目標を設定し、行動する力」が求められている。
 君が、制服で背筋を伸ばし、誇りを持って学校の代表として振る舞う日もあれば、私服でリラックスして、勉強や活動に集中する日もあるだろう。大切なのは、服に支配されるのではなく、君自身が目的意識を持って服を選ぶこと。
 秋田の未来を担う君たち一人ひとりが、自分の哲学を築き、多様な他者と協力しながら、この荒野を切り拓く「探究人」 になるためにも、日々の小さな選択—たとえば、今日着る服—から、その一歩を踏み出してみるのも悪くないと思うんだ。

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