街の引力と、僕らの未来地図——秋田の風景が変わる時、君は何を望むか

 

 僕の故郷、青森の八戸の話から始めさせてもらうよ。子供の頃に慣れ親しんでいたデパート、例えばイトーヨーカドーや長崎屋といった大きなお店が、次々に街から姿を消したんだ。寂しさというのは、不思議なもので、単に買い物が不便になるというだけじゃない。子どもの頃に家族と歩いた、あの独特の匂いと照明の記憶ごと、街の風景からすっぽり抜け落ちてしまうような、そんな寂しさなんだ。
 たぶん僕が高校生の頃だと思うけど、地元の隣町にイオンタウンができたとき、一度だけ行ったことがあるのだけれども、あの巨大なショッピングモールに驚いたことだけは鮮明に覚えているよ。大人になったら、こんな場所で買い物をするものなんだろう、と、ちょっとした憧れさえ抱いていたね。
 さて、君たちの街、秋田の話だ。

さようなら「崎ジャス」——失われた「地域中心」の引力

イオン土崎港店、来年2月閉店 「崎ジャス」で親しまれ…|秋田魁新報電子版

 秋田市土崎港南2丁目の「イオン土崎港店」が、来年2月28日で閉店することが25日分かった。秋田魁新報の取材に、複数の関係者が明らかにした。運営するイオン東北(秋田市)の担当者は取材に対し「2月28日…

 

 君たちにとって、土崎港店、いわゆる「崎ジャス」はどんな存在だっただろう。もしかすると、僕が青森のデパートに感じたような、生活の一部のような場所だったかもしれないね。
 この土崎地区は、秋田市の計画の中で、北部地域の「地域中心」という、生活を支える大切な役割を担っているんだ。ジャスコ土崎ショッピングセンターとして1979年にオープンし、2011年にイオン土崎港店となったこの店が、40年以上の歴史に幕を閉じるというのは、単なる一店舗の閉店ではない。それは、君たちが育った地域中心という「拠点」の引力が、少し弱まることを意味するのかもしれない。
 もちろん、イオン東北は建て替えも含めて検討していくと言っているようだし、この場所が持つ「港町としての趣きを活かした街なか景観づくり」の可能性は残っている。
 だが、慣れ親しんだ店がなくなる時、僕らは街の「新陳代謝」の音を聞くことになる。これは、秋田市が今、真剣に取り組んでいる大きなテーマ、「コンパクトシティ」の考え方と深く関わってくるんだ。

街のダイエット:コンパクトシティと新しい賑わいの種

 秋田市は、人口が減っていく時代に、ムダなく、持続可能に暮らすために、「多核集約型コンパクトシティ」という考え方を基本にしている。これは、都市機能をあちこちに広げるのではなく、都心や「地域中心」といった核となる場所にキュッと集約しようという試みだ。

 そんな中、秋田の未来の活力源として今、熱い視線が注がれているのが、外旭川地区のまちづくり計画だ。市は、この外旭川を「官民連携によるまちづくりのモデル地区」と位置づけている。ここでは、卸売市場の再整備と同時に、新スタジアムや民間施設(店舗や温浴施設、福祉施設など)を一体でつくろうとしているんだ。
 もし君がサッカーファンでなくても、この計画の肝は、交流人口を拡大し、新しい活力や魅力づくりを目指しているという点にある。つまり、イオンのような広域集客施設が、単なる買い物場所ではなく、「年間を通して多目的利用が可能なスタジアム」や、健康増進の場といった、様々な機能と融合した新しい「拠点」へと進化する、そのモデルケースを目指しているわけだ。

「共倒れ」の懸念と、君たちが持つ希望

 ただ、この新しい計画には、真っ向からの疑問もあることを忘れてはいけない。
 市民の中には、「人口減少を前提としているのに、いたずらに商業集積の箇所を増やすことは、それぞれの地域の顧客奪い合いを助長し、共倒れの危険を増すことは必至」ではないか、という切実な懸念を表明している人もいるんだ。

 そうだよね、古い場所の灯が消えようとしている今、新しい場所に集中投資をして、本当に街全体が元気になるんだろうか?と心配になる気持ちはよくわかる。この「共倒れのリスク」こそ、コンパクトシティを掲げる秋田が乗り越えなければならない課題だ。

 でも、僕はこの状況を、君たち若者にとって前向きに捉えてほしいんだ。このモデル地区での取り組みは、そこで実証された官民連携のノウハウや、民間の資金を活用した先進的なサービスといった「成果」を、秋田市全体に広げようとしている。新しい場所が生まれることは、古い場所が手放されてしまうことと同じくらい、大きな変化のチャンスなんだ。

 そして、外旭川にスタジアムができるから秋田に移住を決めたという20代の若者もいるように、スポーツの力は、人々を惹きつけ、街の価値を変えるほどの「とてつもなく大きな存在」になり得る。スタジアムが完成すれば、サッカー以外のイベントや、市民の健康増進の場としても活用される予定だ。君たちが楽しめる、そして参加できる新しい「生きがい」の場が、今まさに作られようとしているんだ。
 秋田市は、大学と連携を強化し、「若い力を活用した地域活力の向上」や「若者が集まりにぎわいを生み出すまちづくり」を目標に掲げている。つまり、君たちの存在そのものが、秋田の未来をデザインするうえで欠かせないピースなんだ。

街を「好き」で満たすこと

 慣れ親しんだ風景が変わるのは、時に不安だ。しかし、都市計画の資料を読んでいると、「秋田が好き」という気持ちが、持続可能なまちづくりの第一歩だという意見が繰り返し出てくる。
 寂しさや不安を感じるのは、君がこの街を大切に思っている証拠だ。その感情を、ただの感傷で終わらせずに、これから始まる新しいまちづくり、例えば地域コミュニティの交流や、公園の活性化、あるいは新しい拠点づくりといった具体的な動きに、どう接続していくか。それが、僕たちに今問われていることだと思うよ。

 新しい建物が建つことだけが活性化ではない。僕らの世代が、この街を「面白がって」生きること。それが一番確かな、未来への希望なんだ。

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