ハンバーガーと君の時代:値段の向こう側に見えるもの

 僕が高校生だった頃、毎日のようにアルバイトをしていたから、学校帰りに友達とマクドナルドに立ち寄って、他愛ない話で時間を潰すような、のんびりした青春の記憶はほとんどない。というか、僕の地元、青森の八戸に最初のマクドナルドがオープンしたのは、僕が八戸を離れようと準備を進めていた1997年12月だったみたいだ。

 でも、高校を卒業して仙台で一人暮らしを始めたとき、とにかくお金がなくて困っていた時期があって、その頃、僕の空腹を満たしてくれたのが、マクドナルドのハンバーガーだったんだ。

59円のハンバーガーと、僕がいた時代の不思議な空気

 あの頃のハンバーガーは、平日だと65円、キャンペーン中だと59円という、驚くほど安い値段で売られていた(2000年2月から2002年2月の話だね)。調べてみると、これは「ハンバーガー戦争」と呼ばれた時期で、1985年から1995年まで210円だったハンバーガーが、不況やBSE(牛海綿状脳症)問題などの社会情勢の影響を受けて、価格が大きく変動していたんだ。

 価格の推移というのは、まるで時代を写す鏡だ。僕が経験した「59円時代」は、経済が停滞し、企業が売上回復のために必死にコストを削っていた、あの時代の空気をそのまま表している。当時のマクドナルドは、安さゆえに忙しかった、という記憶もある。

 そして今、ハンバーガーの値段はまた上がっている。これは、原材料費や人件費、物流費、そして為替変動といった、新しい時代のコスト高の波が押し寄せている証拠だ。

 君たちが今、マクドナルドの価格を見て「もう気軽に行けない」と感じるなら、それは君たちの金銭感覚がおかしいわけじゃない。僕たちが生きる時代全体が、過去のデフレ時代とは違う「熱量」を持っている、ということなんだ。

バンズに挟まれた、君たちの「安心欲求」という名の具材

 ハンバーガーショップの魅力は、単に安くて早く食事ができるという「合理的」な部分だけではない。これは君たち高校生を見ているとよくわかる。

 君たちの多く(96.1%の女子高生)は、この一年以内にマクドナルドに行っているし、最もよく行くのは「友人」と一緒、そして時間帯は「夕方」だという調査結果がある。放課後、友達とわいわい過ごすにはうってつけの場所なんだ。

 さらに、店内で食事をする女子高生の半数以上(52.2%)がFREE Wi-Fiを利用している。つまり、ハンバーガーショップは、食べるという目的だけでなく、友達とおしゃべりをしたり、Wi-Fiを使って作業をしたりする「サードプレイス」、つまり家でも学校でもない、第三のくつろげる場所として使われているわけだ。

 なぜハンバーガーショップが居心地がいいのかというと、その裏にはちょっと面白い事情がある。ファストフード店では、マニュアル化された接客マナーが採用されている。このマニュアル通りのサービスは、一見すると人間味が薄いように感じるかもしれない。
 でも、このマニュアル化、儀式化されていることが、君たち利用者にとって「安心感」や「匿名性」を満たしてくれる一つの要因になっているんだ。誰にも深く干渉されず、一人でも、あるいは友達と一緒でも、周りを気にせず時間を過ごすことができる。

 君たちは、クーポンを利用するためにアプリをダウンロードしたり、安いという理由でマクドナルドを選んだりする。もちろん「価格の安さ」は君たちが重視する大きな理由の一つだが、それと同時に、この画一化されたサービスの中に、「安心パティ」のような、自分だけの居場所を見つけているのかもしれないね。

君たちのエネルギーを秋田で「カスタムバーガー」にする

 君たち若い世代は、僕たちが若かった頃とは比べ物にならないほど、社会に対して前向きなエネルギーを持っている。

 直近の消費者白書で示されたデータによると、君たちは「今の自分を変えたい」という意識や、「チャンスだと感じたら逃したくない」という意欲も他の世代より高いらしい。さらに、「困っている人・助けが必要な人の役に立ちたい」という強い貢献意欲を持っている。ただし、この貢献意欲は、壮大な環境問題よりも、もっと身近で分かりやすい存在に対して発揮されやすい傾向があるようだ。

 また、君たちがモノを買うとき、重視するのは「価格の安さ」や「見た目・デザイン」だが、情報収集は、テレビや新聞よりも、SNSの口コミや評価を最も重視している。また、君たちは「今しかできない体験」(トキ消費)や、有名人を応援する「推し活」など、体験や共感にお金をかける傾向が強い。 

 この君たちが持つエネルギーこそ、秋田の未来を「カスタム」するための最高の具材になる。ハンバーガーショップの価格が時代の流れを映すように、君たちの消費や価値観もまた、社会の方向性を示している。君たちが身近な人の役に立ちたいと願う気持ちは、秋田の地域社会の課題を解決する力になる。実際に、学校教育をきっかけに、マイクロプラスチック問題を知り、地元企業と協力して環境に配慮した肥料を開発した高校生たちの例もある。彼らは、「自分たちが社会の変革に貢献できる」という自信を持てたそうだ。

 君の目の前にある「身近な課題」に目を向けてみよう。
 それは、君たちのSNSを通じた共感力や、チャンスを逃さない行動力で解決できるかもしれない。誰かの意見をそのまま受け入れる必要はない。反対意見があるのは、君が新しいことに挑戦しようとしている証拠だ。君自身が感じた「これは面白い」「これは変えたい」という熱意を信じて、君だけの「カスタムバーガー」をこの秋田という場所で作っていってほしい。

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