未来への投資と奨学金の話

 

 秋田の澄んだ空気を感じながら、僕らがこれからどんな未来を歩むのか、ちょっと立ち止まって考えてみるのも悪くない。今日の話は、君たちの進路、そしてそれにまつわる「お金」の話だ。少しくらい堅い話でも、コーヒーでも飲みながら、肩の力を抜いて聞いてくれたら嬉しいよ。

 僕が伝えたいのは、君たちが将来を考えるための「素材」であって、進むべき道を押し付けるつもりは毛頭ない。だけど、知っているのと知らないのとでは、選べる道の幅が変わってくるからね。

昔と今、学びの道のりの変化

 「大学は義務教育じゃないんだから、自分の責任で進学を決めなさい」なんて、昔はよく言われたものだけど、時代は随分と変わった。僕が学生だった頃と比べると、修学を支援する制度は本当に充実したと思う、昔はほとんどが、返さなければいけない貸与型だったけど、高校は就学支援金制度、大学も給付型の奨学金制度の適用があり、より手厚い支援がされている。

 進学率も大きく変わったね。僕の高校時代、大学に進学する人はだいたい5割くらいだったと記憶しているけれど、今は6割以上の若者が大学に進学している 。

 これは、社会に出るために学ぶことが多くなったのか、それとも大学を卒業しなければ就職試験すら受けられない企業が増えたのか。実際のところは両方かもしれないね。確かに、高専のように就職にダントツで強い学校もあるけれども、一般的に高等教育(大学や専門学校を含む)を受けることは、多くの職業や職種で必要とされており、高校卒業だけでは、職業選択の幅が狭くなり、賃金が安く、就職の機会も限られるという指摘もあるんだ。

 もし君が学びたいという強い意欲を抱いているなら、経済的な理由でそれを諦めてしまうのは、君自身にとって、そして秋田や日本全体の将来にとっても大きな損失だ。使える制度は、遠慮なく活用して、自分の可能性を広げるべきだ、と僕は思うよ。

優しい制度の裏側にある「借りる」ということ

 奨学金制度の中で一番有名なのは、日本学生支援機構(JASSO)のものだね。これは主に、返さなくていい「給付型」と、返さなければならない「貸与型」(利子なしの第一種と利子ありの第二種)に分かれている。

 まず、給付型奨学金と授業料減免を組み合わせた「高等教育の修学支援新制度」があるけれど、これは、住民税非課税世帯やそれに準ずる世帯の学生を主な対象としている。目的は、意欲と能力のある若者が、経済的理由で学びを断念しないようにすることだ。

 「大学無償化」なんてキーワードを聞くと、誰もがタダで大学に行ける、なんて誤解している人もいるかもしれないね。でも、そうじゃないんだ。

 特に注意してほしいのは、貸与型奨学金が「借金」であるという厳然たる事実だ。これは、学校の先生方も「必ず伝えてほしい」と切実に思っている点なんだ。君自身の将来のライフプランに影響を及ぼす、君自身の負債になるんだよ。

 貸与型のうち、利子付きの第二種奨学金は、利子がない第一種に比べて採用基準が緩やかだけれど、上限年3%の利子を付けて返還する必要がある。利子がついている公的奨学金は負担だという意見も多いけれど、無利子の第一種だけでは足りず、やむを得ず有利子の第二種を併用している学生も少なくない。

 この借金が、卒業後の人生設計に重くのしかかることは、多くの先輩たちが証言している。結婚や子育てをためらったり、非正規雇用で返済に苦しんだり。まるで「奨学金という名の学生ローン」のようだ。

 そしてもう一つ大切なこと。奨学金制度はとても複雑なんだ。給付型か貸与型か、保証制度はどうするか、返還方式はどうするかなど、多くの選択肢を選ばなければならない。だからこそ、君自身と保護者の方が協力して制度を理解し、期限までに必要な申請書類を用意する責任があることを忘れないでほしい 。学校側が全ての生徒の申請を完璧にサポートするのは、正直言って難しいからね。

 もし制度の申請でマイナンバーの提出が必要になったり、市町村役場発行の所得証明書が必要で、源泉徴収票では代用できない、なんていう細かいルールに躓きそうになったら、ためらわず学校の窓口に相談してくれ。

秋田で学ぶ、秋田を創る

 奨学金が借金であることは理解したとして、じゃあ君たちはどうすればいいだろうか。

 秋田で君たちの学びを支える仕組みは、もちろん国やJASSOだけじゃない。地元にも心強い支援があるよ。例えば、公益財団法人秋田県育英会の奨学金制度は、全て無利息の貸与型だ。大学や専修学校向けに、毎月5万円の奨学金や、最大100万円の入学一時金(大学の場合)などがある。無利息で借りられるのは、将来の負担を考えると大きなメリットだね。

 そして、卒業後の進路を考える上で注目してほしいのが、秋田県独自の奨学金返還支援制度だ。これは、県外の大学等に進学した君たちが、卒業後に秋田県内で就職し、定住することを条件に、奨学金の返還を助成する制度で、最大3年間で60万円が助成されるんだ。

 奨学金の返済はたしかに長期間にわたり、出口の見えないトンネルのように感じる人もいるかもしれない。でも、秋田で働くことを目標にすることで、その負担が軽減される道がある。

 これは、君の学びたい意欲を叶え、同時に君が生まれ育った秋田の未来を創ることに直結する、とても前向きな選択肢だと僕は思うよ。特定の地域や職種で働くことを条件に、奨学金の返還を補助・免除する制度は、他の地方公共団体でも増えているからね。

 学校側としては、この借金のリスクと、地元の支援制度を組み合わせることで得られるメリットの両方を、粘り強く君たちへ伝えていく必要がある。特に、親御さんが「お金はなんとかなる」と楽観的になりがちな今、奨学金が将来の選択肢を狭めないよう、適切な情報提供とサポートが重要だと思う。

 高等教育は、君個人の成功だけでなく、社会全体の文化的、経済的発展に寄与する、未来への投資だ。君の能力が高まることは、天然資源に恵まれない日本、そしてこの秋田にとって、何より重要な財産になるんだ。だから、お金の心配で学ぶことを諦めないでほしい。制度の仕組みは複雑で、返済の道は長く感じるかもしれないけれど、「君が選んだ学びの道が、秋田の明るい未来につながる」と信じて、胸を張って進んでいこうじゃないか。

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