秋田の未来は、君の「失敗」と「安心」の間に生まれる

 弱さじゃなくて、「心が揺れやすい」という話

 最近、「今の若い世代はメンタルが弱くなった」なんていう言葉を、あちこちで耳にすることがあるね。僕自身、若い頃のことを思い出すと、自分の経験を美化して、君たちの世代と比較してしまっているのかもしれない、なんて反省することもあるよ 。大人になった僕らは、経済力や知識、人脈、それからちょっとした世渡りのうまさで、子どもの頃の自分よりもずっと楽に立ち回れるようになったわけだから 。

 でも、君たちが直面しているのは、「弱さ」という一言では片付けられない、時代特有の難しさなんじゃないかと思うんだ。君たちの世代は、必ずしも「自己肯定感が低い」わけじゃなくて、むしろ「外部の刺激によって、自己肯定感を揺さぶられやすい世代」だと言われている。

 君たちは「ひとりひとりの個性を大切にしよう」という教育を受けて育ってきたけれど、その「個性」というものが、「周りのみんなに認められてこそ価値がある」という意識に繋がりやすいのかもしれない。自分の内側から湧き出る自信よりも、SNSの「いいね!」のような外からの承認に依存しやすいんだね。

 だから、君たちにとって自己肯定感は、まるで天気や体調みたいに「日々のコンディション」のようなものになってしまっているんじゃないかな。ある場面では自信に満ちていても、次の瞬間には急に不安に傾いてしまう。常に他人と比較せざるを得ないSNSの環境で、無意識のうちに自信が削られてしまう若者が多いという調査結果もある。

僕らの時代の「失敗」と、君たちの時代の「保険」

 僕が若い頃、学校の先生や先輩、近所の大人たちというのは、それはもう怖い存在だった。彼らに怒られないようにするにはどうすればいいか、いつも頭を悩ませていたよ 。

 仕事でも、失敗を何度も繰り返し、周りに迷惑をかけ、自分自身も恥をかきながら、そこから「次は上手くやるぞ」って学んできた。困ったとき、誰かに相談した記憶があまりなくて、なんとか自分で解決できないかと必死で考えたものさ 。それが最善の方法だったかは分からないけれど、当時はそれが普通だった。

 でも、君たちの生きる社会は少し違う。君たちは、「失敗したら自分の責任にされることを恐れて、挑戦を避けることがある」と答えた若者が70%もいるというくらい、失敗への恐れ(拒否回避志向)が強い。挑戦は、君たちにとって単なる「やる気の問題」ではなく、「心理的リスク管理の問題」になっている。

 だから、心のバランスを保つために、君たちは「期待値コントロール」という自己防御戦略をとる。例えば、新しいことに挑戦する前に「多分、あまり参考にならないかもですが……」なんて、わざと自分を低く見せたり、ハードルを下げたりする。これはね、失敗しても深く傷つかないための「保険」なんだ。事前に期待値を下げておけば、もし上手くいかなかったときのダメージは小さいし、もし成功すれば「思ったよりできるじゃないか」とプラスの評価がつきやすい。

 君たちの多くは、「一度でも失敗したら終わりだ」という、「残りライフ1」のようなギリギリの心理状態で生きているのかもしれない。この緊張感の裏には、従来の世代が経験した思春期の発達課題が先送りされ、親と仲が良いまま情緒的な結びつきが強い状態で大人になりつつあるという背景もある。

 社会に出るのが遅くなっているのに、社会からのプレッシャーは昔よりも強い。その強い不安から、必死で自分を守っているのが今の君たちなんだ。

 「いいね!」の数より、自分で納得できる努力を積む

 君たちが感じる不安は、決して君たちだけのせいじゃない。社会全体が、君たちの心に「弱さ」や「未熟さ」として映るものを押し付けている側面もあるだろう。

 特に、自分の価値を他者からの評価、つまりSNSの「いいね!」に依存しがちだという話をしたけれど、これは、自分の内側の自信よりも、外からの承認を柱にしているということだ。他人の目を常に意識し、否定されるのが怖くて、必死で「求められる自分」を演じてしまう。心の底に強い不安を抱えたまま、常に緊張している状態だね。

 でも、立ち止まって考えてみてほしい。君の「個性」や「努力」は、誰かに認められるためにあるんだろうか?僕自身が大切にしているのは、「いかに自分が納得できるまで、やり切ることができたか」ということ。僕らの世代は、周りの大人たちがとても怖かったから、なんとか自分で解決しようと足掻いたけれど、それは裏を返せば、他人の評価や叱責を恐れるよりも、自分がどれだけ頑張ったかという努力量を、自分の柱にしていたということだ 。

 君がどれだけ粘ったか、どれだけ恥をかきながら学んだか、それは君自身が一番よく把握できるはずだ。他人の評価がいくら揺らいでも、その努力の事実は揺らがない。自分自身が心から「これだけやったんだ」と納得できる、内なる評価軸を築いていくこと。それが、心が揺れやすい時代を生き抜くための、君自身のレジリエンス(立ち直る力)になるんじゃないかと思う。

秋田の未来を「安心」で満たすために

 現代社会では、感情的に部下を叱りつける指導法は、君たちの強い拒否回避志向と相性が悪く、メンタルヘルス不調のリスクを高めてしまう。僕らが若い頃、怖かった大人たちのように、ただ厳しく接するだけでは君たちの成長には繋がらないんだ。君たちが職場で本当に求めているのは、仕事の優秀さよりも、「何かあったときに後輩を守ってくれる」という安心感だという。上司や先輩に「失敗したら失望されるのではないか」と感じている君たちに必要なのは、挑戦を後押ししてくれる心理的な安全性の提供だ。

 秋田の未来を考えるとき、この「安心」という要素がとても重要になってくる。君たちが今、誰かに支えられながら生きているように、いつかは君たち自身が、この秋田という地域で、人を支える側にならなければならない。そのために必要な強さは、他人をねじ伏せる力じゃなくて、失敗を恐れず、何度でも立ち上がれるしなやかな強さだ。そのためにも、僕が伝えた「自分で納得できる努力」を続けてほしい。

 そして、君たちがこの秋田で、「失敗しても大丈夫だよ」と言ってくれるような、温かい安全網を作り上げていくこと。そうすれば、君たちが必死で守っている「残りライフ1」の緊張感を少しずつ緩め、本当に心から「挑戦したい!」と思える瞬間が増えていくだろう。君たちの挑戦が、この秋田の未来を豊かにしてくれると、僕は心から信じているよ。

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