秋田の未来は、君のスマホから始まる?見た目だけじゃない「デザイン」の話

 

 僕が今、こんな風に、少し長すぎるかもしれない文章を書き連ねているのは、秋田で暮らす君たちに、ひとつだけ伝えておきたいことがあるからだ 。だから、まるで休日の昼下がりに窓の外を眺めているときのような、穏やかで肩の力を抜いた気持ちで読んでくれると嬉しい。

 遠い昔、僕が君たちと同じくらいの年齢だった頃、マック(Macintosh)というコンピューターに初めて触れたときのことを覚えている。当時の僕は、マックを使っている人たちは、みんなポスターや雑誌の表紙をデザインするような、洒落ていてクリエイティブな仕事をしているんだろうと、何の根拠もなく思い込んでいた。

 でもね、君たちの時代の周りを見回すと、デザインというものの存在感が、僕らの頃とは比べ物にならないくらい大きくなっていることに気づくはずだ。君たちのポケットの中にあるスマートフォンは、もうそれ自体がデザインの教科書みたいなものなんだ。

デザインは「見た目」じゃない。「体験」という設計図なんだ。

 デザインという言葉を聞くと、色を綺麗にしたり、イラストを描いたり、見た目を良くする仕事だと思うかもしれない。もちろん、それも間違いではない。でも、本当に大切なのは、そこから一歩踏み込んだ「設計」の考え方だ。

 たとえば、君が今使っているアプリで考えてみよう。ボタンの配置や画面の切り替わりがスムーズで、「ストレスなく使える」と感じる時、それはUI(インターフェイス)デザインが良い仕事をしている証拠だ。

 もっと言うなら、「このアプリを使うと友達とのコミュニケーションが楽しくなる」という「使う人の体験」そのものを考えてつくり出す仕事が、UX(ユーザー体験)デザインなんだ。専門的な言葉だけれど、難しく考えなくていい。

 デザインは、誰かの「困った」を「よかった」に変えるための、頭の中の設計図だと理解すればいい。

 身近な例を挙げるなら、デパートのエレベーター待ちでイライラしている人がいるとする。エレベーターを増やすのは無理だ。そこで、待ち時間に癒される映像を流したり、面白い動画を見せたりして、「待つ」という体験のストレスを解消する。これも立派なデザインによる問題解決なんだ。

 君たちの秋田の暮らしの中にも、きっとたくさんの「困った」や「もっとこうなったらいいのに」という小さな問題が転がっているはずだ。

秋田の課題を掘り当てる、「なぜ?なぜ?」の思考法

 デザインの根っこにあるのは、創造的な問題解決の思考法、つまり「デザイン思考」と言われるものだ。これは、デザイナーだけの特別なスキルではない。これからの時代、あらゆる事業や部門で重要になる「ものの考え方」なんだ。

 デザイン思考の旅は、「共感」から始まる。誰か(ユーザー)が抱えている問題やニーズに、深く入り込んで思いやることだ。でも、ただ相手の言うことを聞くだけではダメだ。本当に必要なものは、彼ら自身もまだ気づいていない、水面下の「潜在的なニーズ」の中にあることが多い。

 君がもし、友達や地域の人から「もっと〇〇が欲しい」という要望を聞いたとしても、すぐにそれを作る必要はない。立ち止まって、「なぜ、それを欲しがっているんだろう?」と、問いを繰り返すクセをつけることが大切だ。

 例えば、君の部活の仲間が「もっと目立つポスターを作りたい」と言ってきたとする。すぐに色を派手にするのではなく、「なぜ、今のポスターでは目立たないんだろう?」「どうすれば、伝えたい情報がちゃんと届くんだろう?」と掘り下げていく。この「なぜ?」を繰り返すことで、表面的な解決策(派手な色を使う)ではなく、本質的な課題(例えば、情報が多すぎて文字が埋もれているなど)を見つけ出すことができる。

 普段の生活で、君が何気なく使っているアプリや、つい立ち寄ってしまうお店について、「なぜ、これは使いやすいんだろう?」「なぜ、このお店は人気があるんだろう?」と考えるだけでも、自然と論理的に考える力、つまりデザインの基礎を鍛えることができるんだ。これは、単に与えられたものを受け取る側から、自分で価値を生み出す「つくる側」の視点へと変わるということだ。

「センスがない」なんて、気のせいだよ

 デザインに興味があっても、「センスがないから無理だ」と壁を感じている君は多いかもしれない。大丈夫、僕も昔はそう思っていた。プロのデザイナーが言うには、デザインに必要なスキルは二つだけ。「改善する力」と「改善点を見つける力」だ。

 そしてこのうち、「改善する力」は、「知識」の問題なんだ。デザインには、「近接」「整列」「反復」「コントラスト」といった基本的なルールや「型」がある。これは、美術系の大学に行かなくても、独学で十分学ぶことができる。例えば、『なるほどデザイン』のような、ビジュアルが多くてわかりやすい本を読んだり、YouTubeの動画で学んだりできる。大事なのは、知識を頭に入れるだけでなく、実際に自分で手を動かして作り、とにかく数をこなすこと。今なら、無料で使用できるデザインアプリは簡単に手に入るだろう。

 そして、作ったものに対して、人から「フィードバック」をもらう習慣をつけることだ。フィードバックは、自分のデザインの欠点、つまり「改善点」を客観的に見つけるための最高のヒントだ。自分のデザインを否定されたように感じるかもしれないけれど、素直にその意見を受け入れて改善を繰り返すことで、君のデザイン力は必ず向上していく。センスとは、生まれつきの才能ではなく、努力で磨き上げられるスキルなんだ。

君の持つ幅広い知識が、デザインの武器になる

 もし君が今、将来の進路、例えば文系か理系かで悩んでいるとしても、デザインの考え方は君の可能性を広げてくれる。デザインの役割は、今やモノの見た目づくりだけではない。マーケティング、経営戦略、コミュニケーション設計といった、ビジネスの上流工程から深く関わるようになっているんだ。

 経済学部の学生がデザインを学んで、それを自社の業務効率化(例えば、複雑な年末調整の案内をシンプルにデザインして問い合わせを減らすなど)や、企画開発に活かしている例はたくさんある。一般の大学で学んだ知識(経済、文学、コミュニケーションなど)が、デザイナーとして働く上で「大きな強み」に変換される時代なんだ。

 君が秋田で何を学び、どんな経験を積んだとしても、そこにデザインの「考える力」を掛け合わせることで、君だけの価値を生み出すことができる。やりたいことが途中で変わっても、それは君の世界が広がり、選択肢が増えた証拠だ。だから、目の前のことに熱中して、秋田の未来をポジティブに設計していく最初の小さな一歩を踏み出してみようじゃないか。

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