厄介な「他者」とどう生きるか?君が自分に迷ったら読むべき一冊。

最近、君は何か「厄介なもの」に悩まされていないだろうか。たとえば、僕らのすぐそばで、毎日のようにニュースになる熊の存在とか、あるいはもっと身近な、理解できない誰かの言動とか、漠然とした将来への不安とか。そう、自分にとっての脅威、つまり「他者」とどう向き合えばいいのか、答えが見つからなくて少し疲れていないだろうか。 そんな君に、僕は岩明均さんの漫画『寄生獣』をそっと差し出したい。
一見すると、人間を食い殺す残虐なパラサイト(寄生生物)を描いたホラーアクションに思えるかもしれない。けれどこの作品は、君が抱える「自己」と「他者」に対する見方を、根本から穏やかにひっくり返してくれるだろう。
街に降りてきた熊とパラサイト、その不思議な類似点
さて、僕らが住む秋田では、時々熊の出没が話題になるだろう。僕らが彼らを「厄介な生物」として排除しようと考えるように、この漫画に登場するパラサイトも、人間を捕食する恐ろしい存在として描かれている。
でも、物語はこう問いかけてくるんだ。パラサイトにとっての脅威は人間だけれど、そもそも地球環境にとって、無軌道に増え、汚染を続ける「人間」こそが、本当の「寄生獣」なのではないか、とね。
立場が違えば、正義も悪もひっくり返る。この漫画が深く掘り下げているのは、まさにこの「立場の違い」なんだ。街に降りてきた熊が、人間にとっては脅威であると同時に、熊側から見れば人間こそがテリトリーを侵す存在であるように、僕らは互いの利益が一致しない「相克的な他者」として、同じ地球という身体を共有し、「ともに」生きていくしかない。この現実から逃げられない以上、どうにか折り合いをつけなくてはならない。
この作品は、その厳しい共存の在り方を、主人公の泉新一というごく普通の男子高校生を通じて描き切っているんだ。
賢くて愛くるしい、僕らの右手に住む同居人
主人公・新一は、パラサイトの寄生を運良く脳で食い止め、右手にミギーという名前の奇妙な同居人を持つことになる。ミギーは合理性と効率を極めた「考える筋肉」のような存在で、彼との会話は、哲学書を読んでいるみたいに面白くて、時にユーモラスだ。
ミギーは当初、人間を「悪魔に一番近い生物」だと冷静に評していたけれど、新一との共同生活を通じて、人間の持つ「感情」や「絆」に少しずつ影響されていくんだ。終盤には、愛する者を守ろうとする田村玲子というパラサイトの自己犠牲的な行動などもあり、ミギーの人間に対する見方は大きく変わっていく。
そして、物語のクライマックスでミギーが発する、人間に対する最高の褒め言葉がある。それは、「心の余裕(ヒマ)がある生物 なんとすばらしい!!」という言葉だ。自分の生存や合理性だけにとらわれず、他者のために悲しんだり、悩んだり、感情でつながり会ったりできる、この「心のヒマ」こそが、人間が独りよがりな存在に陥らないための、最大の取り柄だというわけだ。
君の日常を照らす「心の余裕」という特権
君がもし、この世で自分だけが孤独だと感じたり、自分の存在意義について深く悩んだりしているなら、この『寄生獣』を読んでみることを強くおすすめするよ。
もちろん、この漫画は過激な描写もあるホラー作品だという意見もあるし、作品が問いかける根源的な謎(パラサイトはどこから来たのか、など)は、敢えて明確な答えを出さずに読者に委ねられている部分もある。真実なんて、そう簡単に現実の中に閉じこめられるものではない、ということなのかもしれないね。
この物語を読み終えたとき、君の目の前にある日常や、君を取り巻く「厄介な他者たち」が、以前とは少し違って、「ともに生きている存在」として、穏やかに見えてくるはずだ。
僕らの持っている「心の余裕」という特権は、僕らが思っているよりもずっと、素晴らしいものなんだ。さあ、この大傑作に触れて、君自身の人生観に、新しい風を吹かせてみてはどうだろうか。


