ちょっと疲れた自転車たちの話

街角の「置き去りの哲学」—君の相棒はなぜ立ち尽くすのか

 駅前の風景を思い浮かべてみてほしい、毎日、君の視界に入る、あの錆びかけた自転車。

 僕の勤める学校でも、新しい春が来るたびに、持ち主に見捨てられた自転車 が、ぽつんと増えていくんだ。放置された自転車を見ていると、どうにも可哀想になってしまう。かつては誰かの夢や日々の移動を支えた相棒 だったのに、今はただの鉄くず同然、迷惑な「放置物」として扱われてしまう。

 僕らが住む秋田市では、秋田駅の周辺はちゃんと「放置禁止区域」に指定されている。これは、ただ景観を守るためだけじゃなくて、歩く人たちの安全を守る ための大事なルールだ。おかげで、放置自転車の数は以前より着実に減っているそうだよ。

 でも、僕が気になっているのは、そもそも「どうして放置されるのか」という、その要因のほうなんだ。もしかしたら、卒業や引っ越しで不要になったとき、その自転車を「どうやって処分すればいいのか、ルールがよくわからない」 という単純な理由が背景にあるのかもしれない。自治体ごとに処分方法のルールは決まっているけれど、それを知っている人はどれくらいいるだろう。
 自転車は飽和状態 で、もはや使い捨ての時代 だなんて言われるけれど、もし処分じゃなく、誰かに役立つリサイクルやシェアの仕組み がもっと手軽にあればいいのに、と僕は思う。

 それにね、放置自転車は誰の生活を脅かすかと言えば、体の不自由な人 や救急車 の通行を邪魔したり、まちの印象まで悪くする、なかなか手強い問題なんだ。それに、撤去したり保管したりする費用もバカにならない。東京都だと年間 150 億円以上、名古屋市でも 1 億 3000 万円 だって。これは結局、そこに住む僕たち住民の負担 で賄われているんだ。

見えない壁:片付けたくても片付けられない事情

 「それなら、邪魔な自転車なんてさっさと片付ければいいじゃないか」と君は思うかもしれないね。うん、それは本当にその通りだ。でも、ここにはちょっと複雑な「大人の事情」が絡んでいるんだ。

 僕たち学校の管理側や、駅の敷地を管理する人、つまり「被害者」の側にも、法律という大きな壁がある。たとえば、大学の敷地内に「壊れて廃棄された自転車」 があっても、それを勝手に処分することはできない。なぜなら、その自転車には「所有者」がいるからで、大学は「遺失物法に準じた取り扱い」 をしなくてはいけないんだ。

 京都大学の例では、長期間使われていないと思われる自転車であっても、撤去して警察に問い合わせるなどの手順を踏んだ後、3ヶ月程度の保管期間 を設けてからようやく処分できるんだ。その間に所有者が現れれば、撤去・保管にかかった費用(秋田市なら 1,570 円、東京外大では 3,000 円)を払ってもらって返すことになる。

 この手間と、撤去にかかる費用 は、基本的に管理者側や行政が負担 しなくちゃならない。京大全体では、年間 2,000 台 もの放置自転車を撤去しているというから、その費用と労力 は想像を超えるだろう。僕たち管理する側からすると、なんとも釈然としない、もどかしい状況なんだ。

諦めない未来へ:秋田で始める賢い対策

 じゃあ、この「放置された自転車が可哀想な状況」と「手間と費用ばかりかかる管理者の嘆き」 をどうにかして解消し、秋田のまちを快適にするにはどうしたらいいんだろう?

 まず、効率という点から考えると、新しい駐輪場をドンドン作るよりも、今ある放置自転車をきちんと「撤去」する活動を強化するほうが、費用が安く済み、効率的だ。撤去する頻度を増やし、さらに撤去日をランダムにする ことで、「いつ撤去されるかわからない」という緊張感を人々に持たせることが重要なんだ。

 もし君が「撤去されたことがある」側の人間なら、「放置自転車はしない」 と答える可能性が高くなる。これは、経験が人の意識を変えるということだ。

 そして、もう一つ、君たち若い世代で解決の糸口が見えていることがある。それは「捨てる」のではなく「活かす」という発想だ。一橋大学や大阪大学では、卒業生が放置していく自転車 を、修理して学生向けのシェアサイクルとして再利用する 事業が始まっている。これは、車両の廃棄コストを減らす だけじゃなく、「モノを大切に使う」という考え方 を広める、まさに「持続可能な社会」の目標(SDGs)に繋がる活動なんだ。

 秋田市も、今後は空き店舗を活用した駐輪場の整備 や、レンタサイクルの検討 など、新しい取り組みを模索している。君たち若者が「ルールがよくわからないから捨てる」のではなく、リユースの仕組み や効率的な撤去、あるいは「人の目」(巡回指導員)による啓発活動 に注目して、秋田らしい、優しくて賢い交通の未来を一緒に考えてくれると、僕たちはとても心強い。

 放置自転車が減って、車いすの人も、お年寄り も、みんなが安心して歩けるまち が、きっと秋田の将来 を明るくしてくれるはずだからね。

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