2026年、自転車と僕たちの新しいルールについて

 僕がまだ高校生だった頃、毎日自転車で学校に通っていた。 たぶん、自宅から学校まで、5、6キロぐらいあったと思う。今では禁止されているけれど、当時はMDプレイヤーなんていう、今の君たちが見たら化石か何かだと思うような機械で、お気に入りの音楽を聴きながらペダルを漕いでいたものだ。

 でも、今思い返してみると、自転車の交通ルールなんてほとんど知らなかったし、かなりのスピードを出して運転していたと思う。正直に言えば、運が良かっただけなのかもしれない。

 大人になり、自分が車を運転する身になって初めてわかったことだけれど、当時の僕は、かなり危ない乗り方をしていたものだと、つくづく思う。車のドライバーからすれば、予測不能な動きをする自転車ほど怖いものはないからだ。

 

青い紙切れが意味すること

 さて、君はニュースで「青切符」という言葉を耳にしたことがあるだろうか。 なんだか駅の改札を通るための特別なチケットみたいに聞こえるかもしれないけれど、これは自転車の新しいルールの話だ。

 2026年(令和8年)の4月1日から、自転車にも「交通反則通告制度」、通称「青切符」制度が導入されることになった。 これまでは、自転車で違反をしても、警察官に「次は気をつけてね」と注意されるだけで終わることが多かった。もちろん、よほど悪質な場合は「赤切符」というもっと重いものが渡されていたけれど、これは刑事手続きという、とても大掛かりなものになってしまうため、実際にはあまり適用されてこなかったという背景がある。

 新しい「青切符」制度では、もし君が信号無視や一時不停止といった違反をした場合、警察官から青い紙を渡されることになる。そして、銀行や郵便局に行って反則金、つまりお金を払わなければならなくなるんだ。

  「えっ、お金を取られるの?」と驚くかもしれない。でも、これは逆に言えば、反則金を払えば、それ以上の重い刑事処分や裁判を受ける必要がなくなるという、手続きをシンプルにするための仕組みでもあるんだ。

対象になるのは誰か

 ここで君が気になるのは、「それって僕にも関係あるの?」ということだと思う。 この制度の対象になるのは、16歳以上の自転車運転者だ。 もし君が中学生なら、まだ少し先の話かもしれない。でも、高校生になれば、多くの人が16歳を迎えることになる。つまり、高校に通う君たちの多くは、この新しいルールの当事者になるわけだ。ちなみに、16歳未満の場合はどうなるかというと、これまで通り指導や警告が行われることが多い。ただ、警察によっては「自転車安全指導カード」といったものを渡されて、家の人としっかり話し合ってね、と言われることもあるようだ。

 なぜ今、ルールが変わるのか。「自転車くらいで、ちょっと大げさなんじゃないか」 そう思う人もいるかもしれない。僕も高校生の頃なら、きっとそう思っただろう。「うるさいなあ、自由に走らせてくれよ」と。 でも、これにはちゃんとした理由がある。

 世の中全体の交通事故の数は減っている傾向にあるんだけれど、自転車が関わる事故の数は、だいたい年間7万件前後で横ばい状態なんだ。つまり、減っていないというのがポイントだ。 さらに、自転車と歩行者の事故は増えているし、もっと深刻なデータもある。自転車に乗っていて亡くなったり、大怪我をしたりした事故のうち、なんと約75パーセント、つまり4分の3は、自転車側にも何らかの違反があったというんだ。

 信号無視や、一時停止をしなかったこと。そういった「まあ、いいか」という小さな油断が、取り返しのつかない大きな事故に繋がっている現実がある。 だからこそ、警察も「指導」だけじゃなくて、もう少し実効性のある「ルール」を作って、みんなの命を守ろうとしているわけだ。

免許証がなくても、君はドライバー

 自転車は、気軽に乗れるのが一番の魅力だ。免許証もいらないし、ガソリン代もかからない。 でも、道路に出れば、自転車も「車の仲間」として扱われる。 僕たちはついつい、自分を「歩行者の延長」だと思ってしまいがちだ。歩道を走るときも、歩行者の間を縫うようにスピードを出してしまうことがあるかもしれない。 

 でも、新しいルールでは、歩道での徐行義務違反や、携帯電話を使いながらの運転(いわゆる「ながらスマホ」)も、取り締まりの対象になっている。

 僕が昔やっていたような、音楽を聴きながらの運転も、もし周りの音が聞こえないような状態なら違反になる。「知らなかった」では済まされないことが、これからは増えていくんだ。

少しだけ、想像力を働かせて

 もちろん、この新しい制度に対しては、「自転車専用レーンも整備されていないのに、取り締まりだけ厳しくするのはどうなんだ」という意見もある。それはもっともな意見だと思うし、道路の環境もこれからもっと良くなっていくべきだ。

 でも、環境が整うのを待っている間にも、事故は起きてしまう。 だから、僕たちにできることは、少しだけ想像力を働かせることだと思う。自分が自転車に乗っているとき、もし曲がり角から急に人が飛び出してきたらどうだろう。 もし、自分が車を運転していて、目の前にイヤホンをした自転車がふらりと現れたらどうだろう。

 青切符が導入されるからルールを守る、というのも一つの動機ではあるけれど、それ以上に「自分も他人も傷つけないため」にルールがあるんだと考えてみてほしい。 反則金を払うのが嫌だから止まるのではなく、そこで止まることが、君の明日を守ることにつながるから止まるんだ。

 自転車は、僕たちの行動範囲を広げてくれる素晴らしい道具だ。 風を感じる自由さは、何物にも代えがたい。 その自由を楽しむためにも、肩の力を抜いて、でも頭の片隅にはしっかりとルールを置いて、ペダルを漕いでいってほしい。 

2026年4月スタート「青切符」制度

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