消えた外科医と、病院の待合室で考えたこと

 最近、ちょっと気になるニュースを目にしたんだ。「秋田の外科医が足りなくて、医療体制がピンチだ」っていう話。君もどこかで見かけたかもしれないね。

 僕自身は幸いにも、今のところ病院とはあまり縁のない生活を送っている。年に一度、人間ドックという名の「体の通信簿」をもらいに行くくらいだ。でも、そのたびに驚かされることがある。それは、待合室の風景だ。

 朝の病院は、まるで地元の社交場みたいになっている。あちこちで「やあ、元気?」なんて会話が聞こえてくるけれど、よく考えたら病院で「元気?」はおかしいよね。もしかすると、秋田の高齢者はみんなここに集合しているんじゃないかと錯覚するほどだ。

 今日は、そんな病院の待合室で僕がぼんやりと考えたこと、そしてこれから社会に出ていく君たちに少しだけ伝えたいことを書いてみようと思う。

医師という仕事の「リアル」と「不思議」

 君は「お医者さん」にどんなイメージを持っているだろうか。白衣を颯爽と翻して、難しい病気を治すスーパーヒーロー?それとも、高収入で安定した職業?

 確かに、医師は他の仕事に比べれば収入は高いかもしれない。でも、その実態は想像以上にハードだ。僕が知る限り、彼らは外来での診察が終わった後も、会議をし、何時間も続く手術をこなし、さらには自分の技術を磨くために膨大な勉強を続けている。

 それだけじゃない。患者さんからのクレーム対応や、時には訴訟のリスクにだって晒されているんだ。一体いつ寝ているんだろうと心配になるくらい、彼らの時間は削られている。

 昔は「24時間戦えますか」なんて言葉が流行った時代もあったけれど、今の若い医師たちは少し違う感覚を持っているようだ。彼らは「当直がない」「緊急呼び出しがない」「訴訟リスクが少ない」診療科を選ぶ傾向があるという。これを「3ない科」なんて呼ぶらしい。

 君がもし医師を目指しているなら、この現実は知っておいた方がいい。高い壁を越えて医学部に入った先に待っているのは、ただの華やかな世界だけではないということだ。それでも、誰かの命を救いたいと願うなら、それは本当にかっこいいことだと思うけれどね。

秋田から外科医が消えた理由

 さて、話を秋田に戻そう。なぜ秋田で外科医が足りなくなってしまったのか。

 実は、日本全体の医師の数は増えているんだ。それなのに、地方では医師不足が叫ばれている。これは「偏在」という現象だ。つまり、医師が都市部に集まってしまい、地方、特に秋田のような場所にはなかなか来てくれないということなんだ。

 データを見ると、秋田県の人口10万人あたりの医師数は全国で30位くらい。決して最下位ではないけれど、十分とも言えない。特に、外科や産婦人科、小児科といった、命に直結する現場での医師不足が深刻だ。

 これには、2004年に始まった新しい研修制度も関係しているらしい。研修医が自由に研修先を選べるようになった結果、多くの若者が症例の多い都会の病院へと流れてしまったんだ。まるで、魅力的なカフェがたくさんある街に人が集まるように、医師も条件の良い場所を選んで移動しているわけだ。それに加えて、秋田は少子高齢化のトップランナーだ。患者さんは増えるけれど、支える側の医療スタッフは減っていく。このバランスの悪さが、今の医療現場をきしませている原因の一つなんだろう。

未来の医療は「チーム戦」と「テクノロジー」で

 「じゃあ、秋田の医療はもうダメなの?」と君は不安になるかもしれない。でも、僕はそうは思わない。ピンチはいつだって、新しいアイデアを生むチャンスだからだ。

 例えば、秋田市では公民館を使ったオンライン診療の実験が始まっている。病院まで車で20分もかかる場所に住むお年寄りが、画面越しに医師の診察を受けられる。これなら、移動の大変さも解消できるし、医師も効率よく診察ができる。

 それから、「タスク・シフト」という考え方も進んでいる。これは、これまで医師がやっていた仕事の一部を、看護師や他のスタッフに任せるというものだ。医師の負担を減らし、彼らが本来やるべき治療に集中できるようにする。まさに「チーム戦」だね。

 北秋田市民病院では、開業医の先生と病院の医師が協力する「ダブル主治医」という仕組みを取り入れて、外来の混雑を解消した例もあるそうだ。医師不足を嘆くだけじゃなく、今ある資源をどううまく使うかという知恵が、現場では生まれ始めている。

君たちが作る未来のパズル

 これから先、日本の人口は確実に減っていく。秋田に住む人も減るだろう。そうなれば、医師の数と患者の数のバランスは、いつか自然と落ち着くのかもしれない。でも、日本人の寿命は伸びている。医療に求められるものは、これからも増え続けるはずだ。

 そんな中で、僕たち大人はどうすべきか。そして、君たちはどう考えるべきか。

 一つ言えるのは、これからの医療は「医師だけ」に任せるものではないということだ。テクノロジーを開発する人、病院の経営を考える人、地域で支え合う仕組みを作る人。いろんな立場の人が関わって、パズルを解くように新しい医療の形を作っていく必要がある。

 もし君が将来、医師にならなくても、医療に関わる仕事をしなくても、この問題は君の生活に関わってくる。どこに住み、どんなサービスを受け、どう生きるか。秋田の医療現場で起きていることは、決して遠い世界の話じゃない。

 少し肩の力を抜いて、でも真剣に、このパズルのピースをどうはめるか、僕と一緒に考えてみてくれないかな。未来は決まっているわけじゃない。君たちが選ぶ道の一つ一つが、新しい景色を作っていくんだから。

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